山門をくぐると、ひっそりとしながらも鮮やかな赤が目に入ります。境内に咲く木瓜(ぼけ)の花です。木瓜の花は白や淡い桃色、紅白が咲き分かれるものなどその品種は200種類以上もあるんだそうですが、天得院の木瓜はご覧の通り真紅の花びらです。
木瓜といえば、現在人気の大河ドラマで小栗旬さんが好演している織田信長の家紋「織田木瓜(おだもっこう)」を思い浮かべる方もいらっしゃるかと思います。同じ「木瓜」と書いても、花は「ぼけ」、家紋は「もっこう」と読み方が異なります。諸説ありますがそのうちの一つに、この文様は木瓜の花をかたどったものとだというものもあります。また木瓜の花言葉の一つに「先駆者」があり、新しい時代を切り拓いた信長の印象に重ねて語られることもあります。
慶長十九年(1614)、天得院には東福寺第二二七世・文英清韓(ぶんえいせいかん)長老が住持として迎えられました。文英清韓は豊臣秀吉・秀頼に重用された五山の学僧として知られ、とくに秀頼の依頼によって方広寺の鐘銘を撰文したことでも知られています。
しかしその銘文にある「国家安泰、君臣豊楽」の文字は、国家安泰の「安」の字が徳川家康の名を分けていることや、「君臣豊楽」が豊臣家の繁栄を願う意味に読めるとされ、徳川家を呪うものとして受け取られました。これがいわゆる方広寺鐘銘事件へと発展し、徳川家康の怒りを招き、ついに天得院は取り毀(こわ)されたとも伝えられています。
春の境内に咲く真紅の花を眺めながら、こうした歴史に思いを巡らせていると、つい、松下洸平さんが、少しだけ憎く見えてきたりしてしまいますね笑。